こんにちは、ガリバーと申します。女性アイドルのライブや握手会に通いまくり、主に現場から日々アイドルを応援している一介のヲタクです。

好きが高じて、年間で最高466の現場に通ってしまったこともあります。現在は1児の父親として、家庭とヲタ活の両立を楽しんでいます。

 そんな立場から、現代日本の女性アイドルシーンに対する考えを、連載という形で書き連ねていきたいと思っています。第2回めにあたる今回のテーマは、9月18日(水)・19日(木)の2日間にわたって開催される、欅坂46の東京ドーム2days公演についてです。

 いよいよ本日9月18日(水)、そして明日19日(木)の2日間、欅坂46が東京ドームのステージに立つ。AKB48が結成から6年8カ月(デビューからは5年10カ月)、乃木坂46が結成からは5年10カ月(デビューからは5年8カ月)かけてたどり着いた場所に、わずか4年3カ月(デビューからは3年5カ月)で到達するというスピードであり、2010年代のアイドルシーンの中でも群を抜いた早さとなる。

 同じ坂道シリーズである乃木坂46による2017年11月の初東京ドーム公演は“満を持した”感に満ち満ちていたが、その時と今回の欅坂46の初東京ドームとでは、様相が大きく異なるように思われる。いったい欅坂46は、この初単独・東京ドーム公演において、我々に何を見せてくれるのだろうか。

ライブではなく舞台作品

 欅坂46による今回の東京ドーム公演は、夏の全国アリーナツアー2019の追加公演として位置づけられているため、セットリストを詳述することはここでは控える。しかし本公演でもっとも注目すべきは、本編のオープニングからラストまで貫かれている、その演劇性だ。いつものOvertureで幕は開けるのだが、そこに現れるのは、巨大な檻にとらわれ、立ちすくんだり床に倒れたりしている欅坂のメンバーたちだ。つまり本公演は、この閉じ込められた檻からメンバーが脱出するまでの物語となっているのである。

 脱出する過程で、先に抜け出すメンバーがいたり、時空が歪んだ別世界に迷い込むメンバーがいたり、あるいは水槽の中を漂ったり電車の中にいたり、そして公園で本を読む少女がいたり……と、さまざまな世界を旅するような光景を、我々は目撃する。それは、曲を中心としたライブというよりは、物語が先にあり、曲はあくまでもその物語における“セリフ”のような、そのような舞台作品だ。実際、合間に挟まれるMCにおいても、メンバーは最後に「次の曲をどうぞ」と言うのではなく、「物語の続きをご覧ください」と語ってみせる。それはまるで、ストーリーテラーのようだ。

「逆再生」「表と裏」がテーマ

 そしてこの物語には、2つのテーマが与えられている。それは、「逆再生」と「表と裏」だ。

「逆再生」を最も象徴しているのが、セットリストであろう。実は本公演のセットリストは、今年5月に武道館で開催された3rd YEAR ANNIVERSARY LIVEのそれと、逆になっているのだ。武道館公演における最終曲が今回のツアーの最初の曲であり、武道館における最初の曲が今回のツアーの最終曲。またそれ以外にも、何度も演出映像が逆再生されたり過去のライブの模様が流れたり、あるいは本編ラストでライブの模様がすべて逆再生され冒頭に戻るなど、「逆再生」をキーにした演出が随所に施されている。

 では、「表と裏」のほうはどうか。こちらは、物語の進行役を果たすテロップで具体的に説明もされているのだが、大きくは、度々登場する白いドアを通じてメンバーや言葉が行き来したり、檻の中をメンバーが出入りするといった演出、細かくは、ステージ左右に映し出されている映像が真逆のものであったりといったかなり凝った細工から見て取ることができる。

これを受けて我々は、演劇を観ながら「この意図はなんだろう?」と謎解きをしているような感覚に陥る。この演劇性を帯びた仕掛けが、東京ドームという大舞台で果たしてどのように具現化されるのか、非常に興味深いところだ。AKB48の初東京ドームではメンバーの巨大な壁が作られ、乃木坂46のそれでは460人の女子高生が投入されるという力技が見られたが、果たして今回の演出を担当するTAKAHIROは、どういった手を打ってくるのだろうか。

東京ドームは、2期生も含めた新体制の最初の一歩

 しかし、語られなければならない点はほかにもある。それは、グループの体制の大きな変化だ。9月8日放送の『欅って、書けない?』(テレビ東京)では、次作シングルより初めて選抜方式が採用され、それまでグループの特色でもあった「全員選抜」体制が崩れることがアナウンスされた。

2018~2019年の欅坂46は1期生の卒業が相次いだが、既存曲をパフォーマンスする際にはその空いたポジションを2期生が埋めるといったやり方を、2018年末の音楽番組から以降しばしば行ってきている。それは今回のツアーでも踏襲されており、2期生はあくまでも空いたポジションの穴埋めに徹し、そして1期生のみで制作された最新シングル「黒い羊」(2019年2月)以降、正式リリースが止まっている状態であった。

 しかし、選抜から外れるということが、決してネガティブな意味しか持たないわけではないことは、今回のツアーの地方公演ですでに証明済みだ。選抜発表は7月某日に行われていると伝えられたが、8月から始まったツアーは鈴本美愉が最初と最後の要所の曲で、怪我で休養していた平手友梨奈に代わってセンターに立ち(大阪公演で平手が復帰以降は1曲目のみ)、小池美波もセンターを務めている。この2名はいずれも、今回選抜落ちしているメンバーである。2期生に関しても、選抜落ちした山﨑天は非常に重要な役割を担っている曲もあり、このあたりが東京ドームでどう変化しているかは非常に楽しみである。

どちらにしても、体制としても、選抜落ちしたからポジションを下げるという単純な配役はされておらず、選抜落ちしてもコンサートで重要な役割を担うことには変わりないことから、こういった選抜組とアンダー組との行き来は、ある程度柔軟に行われるものと予想されている。

 今回の東京ドームこそが、新体制の欅坂46のお披露目の場となるでろう。そういった意味では、今までのAKB48、乃木坂46の初単独東京ドーム公演とは、大きく意味合いが異なるのだ。

3年間の集大成ではなく、新たなスタート

「サイレントマジョリティー」で鮮烈なデビューを果たしてから約3年半。彼女たちの道のりは、圧倒的な売り上げや人気とは裏腹に、決して順風満帆とはいえないものだった。絶対的センター・平手友梨奈の体調不良や、中心メンバーの重なる離脱、滞るリリース。なればこそ、本当のスタートはここ、東京ドーム。女性アイドルグループにとって、これ以上に贅沢な“再出発”の舞台があるだろうか。彼女たちはこれまでも、ツアー千秋楽において何度もドラマを見せてきてくれた。キャプテン菅井友香は地方シリーズの最終公演で、「(東京ドームでは)新たな挑戦があるので、メンバーそれぞれメラメラ燃えています!」と語っている。その挑戦はどのようなものなのか、欅坂46は我々にどのような新たな“作品”を見せてくれるのか、大いに期待したい。

(文=ガリバー)

ガリバー
アイドルのライブに通い始めて14年目。メジャーアイドルからインディーズ、地方アイドルのライブや握手会まで、年間約300回ほど足を運んでいます。大阪の地を拠点に、北は北海道から南は沖縄まで全国を回りますが、最近の遠征先は東京が多め。現在もっともハマっている「推し」は、乃木坂46の齋藤飛鳥さん岩本蓮加さん、ラストアイドル・Love Cocchiの西村歩乃果さんです。<Twitter:@gulliverdj&gt;