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　櫻坂46を11月に卒業した菅井友香さんが、来年1月に始まる舞台「新・幕末純情伝」で主演を務めます。大役に挑む今の心境や、演出家に言われた忘れられない一言、悩んだアイドル時代に救われた「師匠」からの言葉や、櫻坂46の未来を託した現役メンバーへの思いについて語ってもらいました。

　――今回、櫻坂46を卒業して初めて舞台に出演されます。どんな心境ですか？

　「卒業というのはすごく大きな転機だったので、その後の一つ目の大きなチャンスを頂いたなと思いました。この作品をしっかりお届けすることで、また何か道が開けたらいいなと思いますし、グループ活動で学んだことや、身についた度胸や辛抱強さが、少しでも生かせたらいいなと思います」

　――主演舞台は「飛龍伝2020」以来ですね。

　「『飛龍伝』は自分にとってすごく大きな挑戦で、学びになることがたくさんありました。『新・幕末純情伝』も同じつかこうへいさんの作品で、今回も（演出家の）岡村（俊一）さんのもとでお芝居ができるということで、感謝の気持ちでいっぱいです」

　「長年愛され続けている作品でもあり、主人公の沖田総司は歴代の女優さんの方々が演じられてきた大事な役ということで、責任感をすごく感じています」

　――「飛龍伝」に続いて岡村さんとご一緒される心境はいかがですか？

　「すごくうれしいです！　『飛龍伝』が最初で最後かなと思っていたので、またこうして機会をいただけたのが本当にうれしくて、岡村さんに『菅井が成長して帰ってきたなぁ』と少しでも思っていただけるように、今、すごく燃えています！」

　――学生運動を描いた「飛龍伝」で、全共闘40万人を束ねる委員長として革命に命を捧げるヒロイン・神林美智子を体当たりで演じたことは、菅井さんにとってどのような経験になりましたか？

　「自分にとって初めてのことばかりで、みなさんにたくさんご迷惑をおかけしちゃったかなと思うんですけど、『自分には無理じゃないか？』と思うことでも、みなさんの力をお借りしながらなんとか乗り越えられたので、すごく自信にもなりましたし、今も支えになっています」

　――岡村さんにかけられた印象的な言葉はありますか？

　「（演技の正解を自分で決めてしまうことなく、演出意図に沿って縦横無尽に感情を表現できる素直さについて）『菅井は真っ白じゃなく、透明だから。今、なかなかいないよ、そんな子は』と言っていただいたことを覚えています。『自分には何もない』と思ってやってきたので、何もないことを『透明』と言って評価していただいて、すごくうれしいですし、何でも素直に吸収して学ぶ姿勢を大事にしていきたいなと思いました」

　――「新・幕末純情伝」は、「沖田総司が実は女性だったとしたら」という着想をもとに、幕末の動乱や沖田をめぐる恋模様を描いた作品で、これまでに、広末涼子さんや桐谷美玲さんといった俳優の方々が沖田を演じてきました。菅井さんは今回、どんな沖田をお客さんに見せたいですか？

　「沖田は生まれ育った環境が孤独で、しかも女なのに男として育てられて、つらい気持ちを抱いてきたけど、誰かを信じることを諦めずに、愛を求めて生きてきた人だと思うので、その『まっすぐさ』をしっかりと表現できたらいいなと思います」

転機となったＴＡＫＡＨＩＲＯの言葉

　――菅井さんにとって、人生の支えになっている言葉はありますか？

　「欅坂46がデビューして2年目のことです。キャプテンに任命していただいて初めての夏だったのですが、メンバーもまだ若くて、なかなかまとまらなかったり、多忙でメンタルを保つことが難しかったりするなかで、キャプテンとしても、1人のメンバーとしても行き詰まってしまっていた時期でした」

　「そんなときに、顔色が曇っていた私を見かねた（欅坂46、櫻坂46の振り付けを担当するダンサーの）TAKAHIRO先生が『菅井、どうした？』と声をかけてくださって、『自分に自信が持てないんです』という話をさせていただきました」

　「TAKAHIRO先生は、『自信は、人前で話すときみたいに必要なときだけ、持っているように演じればよくて、そんなに無理をして持たなくてもいい。それよりも、自分が目標に向かって努力していることに対する誇りをしっかりと持っていればいいんだよ』と言ってくださいました」

　「私はその言葉を聞いて、『人一倍鏡に向かって必死に練習して、自信を持てる段階まで持っていくしかないな』と切り替えることができました。それをきっかけに、一つひとつのライブやダンスに対してかける時間が増えて、気づいたら、当時のうじうじしていた自分から変わることができました」

　――卒業写真集に収録されたインタビューで、TAKAHIROさんは菅井さんのことを「鬼の練習屋さん」と表現しています。

　「見ていてくださったことに、まずびっくりしました。でも、（自分以外にも）少しでも時間があれば鏡に向かって練習するメンバーはたくさんいるので、そういうパフォーマンスにかける思いは、これからもずっと受け継いでいってほしいです。私も、何をするにしても、できることを全力でやるという姿勢はなくさずにいたいなと思います」

　「卒業公演後の打ち上げで、TAKAHIRO先生から『菅井には努力する力と困難に立ち向かう勇気がある。その二つの武器を得た菅井は、どこに行っても大丈夫だよ』と言っていただきました。TAKAHIRO先生のもとでダンスや色んなことを学べたことへの感謝と喜びがあふれてきました」

　――菅井さんはアイドルとしての7年間でご自身のどんな変化を感じますか？

　「グループ加入前の自分とは心の太さが変わった気がします。自分で言うのも恥ずかしいんですけど、色んな経験から打たれ強くなって、根性もついたかなと思います」

　――アイドルとして、キャプテンとして、最後まで走り抜けられたのはどうしてだと思いますか？

　「うーん。なんでなんだろう？（笑）　でも、やっぱりキャプテンという立場を与えていただいていたからこそ、『みんなの力になりたいな』と思うことができました。すごく不安になることや、『今、試練だな』と思うような、予想していなかったことがたくさん起きた7年間でしたが、そのたびに『自分だけ逃げるわけにはいかない』と思いましたし、その責任をすごく感じていたので、『今は辞められないな』といつも思っていました」

　――キャプテンという立場が菅井さんを奮い立たせたんですね。

　「そうですね。『信じてついてきてくださったみなさんを裏切りたくない、喜んでもらいたい』という気持ちがあったので、少しでもグループを良い状態にして、願いをかなえてから卒業できたらなと思っていたので、気づいたら7年経っていました（笑）」

　――グループを巣立った今、目指している理想のご自身の姿はどんなものですか？

　「まだカタい部分がどうしても取れなくて、良い意味でもっと自分を解放して、もっと気楽に楽しく前向きに生きられるようになりたいなと思っています」

　――カタい部分というのは、キャプテンとしてピシッとしないといけないという意識がまだ残っている感じでしょうか。

　「そうみたいです。スタッフさんからも、『もっと肩の荷をおろしていいんだよ、もっと自分軸で考えていいんだよ』と言っていただくんですけど、その考え方が分からなくなってしまっていて（笑）。自分のことを考えられる環境がすごく不思議にも感じてしまうんですけど、今まで培ったことを大事にしつつ、でも、解放していいところは解放して、もっと楽しい人間になりたいなと思います」

　――これまでは「自分がこうしたい」よりも「グループのためにこうしよう」が強かったと。

　「悪いことではないと思うんですけど、『グループが良く見えるためにはこうしたほうがいい』というふうに全て考えて行動していましたね。これからは、自分自身の本心や、心の風向きを大切にしながら、でも、周りの方々と協力することは忘れずに、人とのご縁を一つひとつ大切に生きていけたらなと思います」

　「卒業してからの1年は、とにかく色んな経験やチャレンジを大事にしていきたいです。やはり軸には『役者として活動していきたい』という思いがあるので、まずはこの舞台をがんばりたいなと思います」（聞き手・川村貴大）