平手友梨奈 迷いも「もう、やるしかない」

「やるしかない」と前進を続ける平手友梨奈=東京都千代田区(石井健撮影)
「やるしかない」と前進を続ける平手友梨奈=東京都千代田区(石井健撮影)

出演映画、ドラマが相次ぎ公開、放送され、女優としてますます注目される平手友梨奈(ひらて・ゆりな)(20)。だが、歌、ダンス、芝居…、「まだ、何にもとらわれたくない」という。表現者としての可能性を追い続ける決意を平手が語る。(石井健)

落ち着いた、しかし、ささやくような小声で話す。周囲の雑音を打ち消し、こちらの耳に確かに届くのだから不思議だ。静かな話し方ですね。あ、すいません。はにかむと大きな瞳がきらりと光る。

力強い目。女優、平手の武器だ。公開中の映画「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」(江口カン監督)では、心を閉ざした車いすの少女、ヒナコの意志の強さを目で表現する。

「殺さない殺し屋」は、令和元年に大ヒットした岡田准一主演「ザ・ファブル」の続編。世界に通じるアクション映画を目指し、岡田がファブル(寓話)と呼ばれて恐れられる伝説の殺し屋を演じる。ヒナコは、堤真一が演じる敵役がファブルに仕掛ける復讐(ふくしゅう)劇に巻き込まれる。

平手は、これが3作目の映画。過去2作でもヒロインを演じたが、「ヒナコは難しい役どころ。自分が演じていいのか」と悩んだ。

映画「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」(C)2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会
映画「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」(C)2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

だが、「台本を読んだら、ヒナコは応援したくなるキャラクター。自分が演じることでヒナコを応援したくなった」と出演を決めた。映画の終盤、ヒナコはファブルと危機に直面する。「あそこは吹き替えじゃなく、実際に私が岡田さんと演じているんです」。淡々とした口調が急に熱を帯びた。間違いなく見せ場に違いない。

大人気アイドルグループ、欅坂(けやきざか)46(櫻坂46に改名)の中心メンバーだったが、昨年1月に離れた。環境が大きく変わったのでは? 「うーん、自分としては何も変わっていないです」

確かにグループ在籍時から映画に出演。一方、昨年末に作曲を手掛けた「ダンスの理由」という歌を出した。歌とダンスのアーティストであり、同時に役者であることに変わりはないというわけだ。

「中途半端と指摘されるかもしれませんが、まだ、何かにとらわれたくない」

映画は18日に封切られたが、「いまでも自分がヒナコであることが正解なのか不安」だと明かす。

だが、常に最後は、こう決断して前に進むのだという。「もう、やるしかない」。きらり、ヒナコと同じ強い光を瞳に宿す。

<ひらて・ゆりな> 平成13年生まれ、愛知県出身。欅坂46の一員として28年、デビュー。30年、「響-HIBIKI-」に主演で映画初出演し、日本アカデミー賞などの新人賞を受賞。映画は他に「さんかく窓の外側は夜」。ドラマは「ドラゴン桜」。

「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」は東京・丸の内ピカデリー、大阪ステーションシティシネマなどで全国公開中。2時間11分。

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