欅坂46映画で再認識した平手友梨奈の特異な才能

[ 2020年9月22日 11:56 ]

2016年、「全力で頑張ってみたい」と笑顔を見せた平手友梨奈
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 【牧 元一の孤人焦点】公開中の欅坂46のドキュメンタリー映画「僕たちの嘘と真実」を見た。特異な才能の持ち主である平手友梨奈がかつて所属していたグルーブの成功と苦悩を記録した作品だ。

 平手の特異性を、ライブ中に転落するシーンで再認識できた。楽曲の途中、他のメンバーがいる正面ステージから踊りながら抜けだし、花道ステージを通って中央ステージに到達。曲が終わると、力尽きた様子でステージから落ちてしまう。

 曲の内容をより端的に表現する方法としてメンバーから1人離れていくパフォーマンスを自ら考えたという。確かに、あの日、ライブで平手の圧巻のダンスを見ていた観客は胸を打たれたに違いない。残された映像もやはり強烈だ。ただ、結果的に本人がけがをしてしまえば元も子もない。

 過呼吸のような状態で苦しむ姿も、何度も映し出される。自ら理想とする表現を達成するため思いを込めて力いっぱい動き回るが、精神と肉体の限界を超えてしまっていることがうかがえる。

 自分自身が壊れてしまうほどの極限的パフォーマンス。それが平手の特異な才能の表れであり、グループが成功した要因のひとつであり、本人と他のメンバーの苦悩が生まれた原因であろう。

 平手はほぼ陰鬱(いんうつ)な表情だが、初期の頃の映像では明るい笑顔も見せていて、その当時、本人にインタビューしたことを思い出した。2016年4月のデビューシングル「サイレントマジョリティー」発売直前の取材で、グループに加入した理由などについて聞いたのだった。

 「地元にいた頃は自分から『頑張る』という言葉を全く発しない子だったんです。でも、何かの目標に向かって全力で頑張ってみたいという思いがあって、欅坂を受けてみようと思いました。もともと乃木坂46さんが好きでした。中学ではバスケ部だったんですけど、部員の子となじめなくて、ずっと、やめようかなと思っていました。楽しいことが何もなかったので違う世界に入ってみたいと思ってたんです」

 その答えを思い返すと感慨深い。何かの目標に向かって全力で頑張ってみたいという思いはグループでの活動で十全に達成されたと言えるだろう。

 デビュー曲のサンプル音源で平手の冒頭のソロ歌唱を聞き、実際に本人に会ってみて感じたのは、昭和のスター・山口百恵さんとの類似性だった。愁いのある低めの歌声とクールなたたずまい。世代的に百恵さんのことは知らないだろうと思ったが、質問してみると知っていたので、類似性を本人に伝えた。

 「『山手線』(平手のソロ曲)の振り付けを担当してくれた女性の方に『曲を聴いた時、山口百恵さんみたいだと思った』と言われました。私はお名前を知っているくらいなんですけど、すごい方だと思うので、さすがに私では追いつけません」

 百恵さんとは、時代も違えば、ジャンルも違う。比較しても意味がないのは分かっている。しかし、欅坂46の映画を見終わって、こう思った。昭和のファンが百恵さんの軌跡を伝説と捉えたように、将来的に、平成と令和のファンが平手の軌跡を伝説と捉える日が訪れないとは限らない。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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